うぇー、砂吐きそうだ。ご注意ください。
ぶっちゃけ空気が読めていない話です。すみません。
でも、どんなときでも前を向けるのが兄貴だと思うから(というか私の願い)
それに22話が始まるまでじゃないと兄貴の怪我についての妄想は続けられないと思うので…。
若干EDネタも含みます。
ED見るたびに赤く染まる海に恐怖を感じるんですよね。鮮やか過ぎる…。
「容疑者にはカツ丼、婚約者には指輪。じゃあ怪我人には?」
唐突に問われてロックオンは必死にタオルをしぼっていた左手を止めた。そのまま視線を問いの主、アレルヤに向ける。
ロックオンの負傷というCB全体において衝撃的な出来事が起きたのが数日前、そして、そのロックオンが目を覚ましたのがつい昨日のことだ。昨日は検査という検査が行われ、疲れきったロックオンはマイスター達とゆっくり話す機会も無く眠りに入ってしまった。そして今日、朝一でアレルヤが見舞いに来ていたのである。
汗をかいた身体を拭きたいと言ったロックオンのために、アレルヤはたっぷり水の入った洗面器とタオルを準備して、発した言葉がこれだ。
「なんだよ、いきなり」
「いいから答えてくださいよ」
そう言ってアレルヤは笑顔でベット脇の椅子に座った。ロックオンの言葉に返すつもりがないことを見て取って、アレルヤの言葉を思い出す。容疑者にカツ丼、婚約者に指輪。それぞれ相手に手渡す定番だ。なら怪我人には?そしてこの場合は自分のことを表していることは用意に理解できた。なんとなく答えてもらいたいらしいことはわかるが、と考えてロックオンは内心意地悪く笑った。もちろん表面上は少し困った表情のままだ。
「うーん、それに見合うもの、か?なら、包帯、とか?」
あくまでもとぼけてみせる。ロックオンの演技を素直にアレルヤは本心だと思ったらしい。
素直だなぁと微笑ましく感じる。
「えぇ?そうきますか」
犬であれば耳をうなだらせているような表情に、さすがにちょっと悪く思えてロックオンは困ったように笑った。
「悪い悪い、お前の言いたいことはわかってるよ。りんご、だろ?違うなら果物、とか」
「時々意地が悪いですよね、ロックオン…」
からかわれていたことがわかったのか、アレルヤは軽く落ち込んだ。が、すぐに復活すると持って来た袋の中からりんごを取り出し、果物ナイフを得意げにロックオンに見せる。彼が自分を励まそうとしてやっているのがわかってロックオンは少々反省した。ふざけて返すのは今するべきことではなかったのかもしれない。
が、後悔先に立たず。言ってしまったことは言い直せない。
ここまで言ってかぶりを振る。だめだ、いつもの自分のペースが保てて居ない。
「そう、りんごです。以前よりだいぶ剥くのが早くなったんですよ」
練習の賜物ですよね、とあくまでも明るく笑うアレルヤにロックオンは目を細めた。以前、とは数ヶ月前、4人そろってオフとなった日に、CBの施設の隠してある無人島で行ったバーベキューのことだろう。彼はりんごを剥こうとして、時間がかかりすぎて変色させていた、気がする。おそらくそのことを言っているのだろうと検討をつけた。
自分は刹那の散髪をして、それから準備に関わったのだった。懐かしい、と素直に思う。
最近は忙しすぎて、そしてさまざまな想定外のことがありすぎて、ちょっと前のことなのにかなり昔のことのように感じてしまった。
「皮を一つなぎで剥けるようになったのか?」
「うん、たぶんね」
嬉しそうにそう言い切ってりんごに取り掛かったアレルヤを見て、ロックオンも再びタオルをしぼり始めた。両手ならば簡単にできることなのに、片手になったとたん非常に難しくなる。それはこの二日間でしっかりと理解できたことだった。今もタオルをしぼるだけなのに、こんなにやりにくい。
隣を見やれば真剣にりんごと対峙するアレルヤ。
その姿にやる気をもらった気がしてどうにかこうにかしぼりきった。こんな小さなことなのに達成感を感じてロックオンは嬉しく思った。いたるところに小さな幸せが転がっていて、普通は気づかないそれに気づけた気がした。
洗面器を横にある棚にこぼれないように移動させてそのそばにタオルを置き、上着を脱ぐ。そのときアレルヤがちらりとロックオンを見たが、すぐにりんごに視線を戻してしまった。りんごを見れば、残り半分。上達したのは確からしい。
双方とも無言で己の作業に没頭し、ロックオンが気づいた時にはアレルヤは剥き終わってじっとロックオンが拭く様子を見ていたようだった。ロックオンも自分で拭くことが可能な部分を拭ききり、ひと段落をつける。あとは、背中と左腕だ。さすがにそこは自分には拭けない範囲である。となれば。
「アレルヤ、手が届かないところは頼めないか?」
「もちろんいいですよ。貸してもらえますか」
快く頷いてくれたアレルヤにほっとしてタオルを渡す。冷たく濡れたそれを手に取り、アレルヤがベットの上に乗り上げてきたのがきしむ音によってわかる。まず背中を拭いてくれるらしい。が、状況が少々まずかった。きしむベットに上半身が裸である自分、そして背中に手を触れるアレルヤ。彼にそのような意思がないことは手つきから明らかだったが、ロックオンはふいに意識してしまって恥ずかしくなった。そういえばいつから彼と触れ合っていないだろうか。
――欲求不満なのかよ、俺。
どうしようもなさすぎて、笑うしかない。その心の中でつぶやかれた言葉が聞こえたかのようなタイミングでアレルヤが手を止めた。開いている手を肩甲骨に当てて、滑らかな肌を感じるようにゆっくりと上下に動かす。と同時にさらりとしたものが左肩に置かれた。肩の下の部分に熱い吐息が当たっているため、アレルヤが肩に額を当てたのだろうということは想像ついた。人肌の温かさが気分をおだやかなものにしてくれる。
「あなたが生きていてくれてよかった」
「…スナイプに重要な右腕を失ってしまったけどな」
まさか、再生治療までできなくなるとは考えてもみなかった、とつぶやく。今では身体を拭くことさえ、たぶん身体を洗うことも難しい状態だ。右腕が無くなるだけでこんなに変わってしまうとは、正直思っていなかった。慣れるまでかなりかかるだろう。
「あなたの長所は狙撃だけじゃないですよ」
そう言ったアレルヤの声が震えているようで、振り向こうと思ったが止められる。聞こうとは思わなかったが、…ないているのか。
「僕達マイスターをまとめられるのはあなただけだし、スメラギさんの相談に乗れるのもあなただけだ。それに、あなたがいるとわかっているだけで、僕がどれだけ安心するか…」
言葉を聞いて、胸が詰まる気がした。率直で深い思いに暖かいものが頬を伝う。
昨日、自分の目覚めに立ち会ったのは彼だった。その時感じた衝撃の大きさをじかに見たのも彼であった。その時は、他のクルーが部屋に入ってきて会話は終わりとなったが、一晩たって自分の言いたいことがまとまったのかもしれない、と考え、とりあえず左腕で涙をぬぐう。
「CBの理念に沿う意思さえあれば、することなんて掃いて捨てるほどあるんです。それに…」
それに、今ここでCBを離れることは許されない。もう計画は動き始めてしまっているし、それなりにCBの内部に関わってきた人間だ。何もせずに開放すると考えるほうが可笑しいだろう。
中途半端に切った言葉は、ロックオンにもわかったらしい。はは、と軽く笑って、残った一本の腕で、軽くアレルヤの頭をたたく。
「大丈夫だ。俺の意思は変わってない。まだ、なにもやってないんだ。計画だってやっと第1段階が終わったばかりなんだぜ。ここで退場なんてできるわけないだろ」
それに、と続ける。
「お前も俺の前から居なくなるなよ。俺にとってもお前がいるところだけが安心できる場所なんだよ」
お互いに依存しまくりだな、ロックオンは笑う。その笑顔がたやすく想像できて、そのことに自分と彼のつながりの強さが現れているように感じられ、ほっとした。
安心したとたん、ふいにいたずら心がむくむくと湧き上がり、アレルヤは素早く肩口に唇を寄せた。強く吸い付き、びくんと肩を揺らしたロックオンをいとしく思う。彼は焦った表情で首だけ振り返ってきた。というのも、肩を両手でアレルヤが抑えているから体全体で振り返られないからだ。
「ちょ、アレルヤ、何を!?」
「いいじゃないですか。背中なので見えませんよ」
白い肌に紅一点。鮮やかなそれを確かめるように手で触れる。その時の表情を垣間見て、ロックオンはやばいと焦ったが、一瞬遅かったようだった。
「それに右腕が無くなっても、一緒に快感に浸れるでしょう?」
狙撃手に対してはいささか考えなしであるとも考えられたが、それを無視して吐き出す言葉の勢いそのままに今度はうなじ半ばに吸い付く。ロックオンは首に、ちり、と痛みを感じたがそれを責めるどころではない。顔をアレルヤからそむけるだけで精一杯だった。内心、よくそんなこと言えるな!と呆れ半分照れ半分で叫びたかった。
「ロックオン、首まで真っ赤ですよ」
くすくす笑いながら触れてくる。
ますます顔を紅く染めながら彼は結局うるさいと怒鳴った。
棚の上では、やっぱりりんごが茶色くなっていた。
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いたずらっこアレルヤ。
そんな上につけちゃったら他のクルーに見つかっちゃうよ!とか思いつつ。
アレルヤに下半身も拭いてもらったかどうかは秘密です(笑)
あれ?ロックオンが女々しいかも。かっこいい受が書きたいのに…(明らかに技術不足)
精進します。
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