今日からちょっと出ないといけないので、更新できないなあと思い、悲しくなってひっぱり出してきたものです。
短めです。
引っ張り出してきたので、本編なんてめじゃないぜ!なノリになってます。
彼ら二人の戦闘訓練(なのか?)
広く静かな空間で、ただ衣の擦れる音とそれを纏う者の激しい息遣ぎのみが響く。たまに聞こえる小気味よい音は拳と掌の鳴らすものであった。
おそらく十数分前から続いていると考えられるそれは、ほぼ互角に見える。ただ、動き回る影の片方にはもう片方に比べ余裕が見えた。それは経験による自信のためか、はたまたもともとの気性によるものかはわかりかねた。彼は滴り落ちる汗を気にしたのか、動きの途中にすばやく汗をぬぐう。それを隙と見たらしい相手の、右下からの拳を軽く頭を動かすことで避け、ついでにその右腕を捕らえて、彼は訓練を始めてから初めて口を開いた。
「ほら、今隙が見えてる。前も気をつけろって言ったろ」
「…癖なんですよ」
そう言う彼の弱点は、相手に隙らしきものを見ると――それが相手の意図的なものであれ――大振りな攻撃に移ってしまうことだ。それは焦りのためだろうとロックオンは考える。過去に何があったか知らないが、このままでは対人戦闘になった際に見抜かれて負けてしまう。この場合、負けは死に直結するのだ。自分たちはガンダムマイスターで、戦闘員や傭兵のように肉体実践に駆り出されることは滅多にないとはいえ、何があるかわからないこの世の中だ。不安は少ないほうがいい。
「ちょっとした癖が命取りなんだよ」
「わかってます、って!」
言葉の語尾に力をこめたと同時に右足で相手のわき腹を狙う。そうされたロックオンは、それを見越していたのかすんなりとアレルヤの右腕を離し、その攻撃を避けた。笑みを浮かべたままで。あくまでも余裕である、そう見せるように。実際、体力的にはロックオンのほうが劣っているのだ。精神的な揺さぶりをかけなければ、対等になどやっていけない。
彼らの動きは無駄のないものに見えた。ロックオンが言う弱点も本当に小さいものだ。流れるような動き、リズムよく繰り出される攻撃。芸術とまでは言わないが、見る者を充分感嘆させるに値するものである。美しさを追い求めるかのような双方の攻守の動きに惑わされるが、彼らは本気でやりあっていた。訓練でできないことなど、実践では役に立たないと言ったのは誰だったか、と乱れた息の元ふと考えて、ロックオンは目の数ミリ前を唸りをあげて通っていった拳に息を呑んだ。
かなり危なかった。
うおー、と無意識に声が漏れ、それが耳に入ったのかアレルヤが少し不機嫌そうに見てくる。まさか、こんな時に集中を切らしていたなんて。そんな思いを彼は素直に言葉に乗せる。
「真面目にやってくださいよ。そんなことじゃ大怪我します」
悪い悪い、とまったくそう思っているようには考えられない口調で――しかもちょっと眉尻を下げた笑顔だ――謝る彼に、アレルヤは小さく呆れたようなため息をついた。そして何を思ったのか、彼はすっと目を細め、身体を密着させるように動いた。眼差しの変化と、思ってもみなかった彼の行動に、ロックオンはぎくりと身を強張らせる。狙うような視線と掴まれる右腕。やばい、と本能的に思うが、右腕をとらわれた今、後方に逃れることはできそうにない。彼を押し倒して逃げればいいなど、頭に浮かぶことすらなかった。
「…ロックオン」
そんな前にも後ろにも逃げられない状況で、アレルヤがつぶやく。低く、深く、腹の底に響くような声音。壮絶に色の乗った、つまり夜を思い出させるような。ロックオンにとってそれは痛恨の一撃とも言えた。昨晩の彼が脳内に一瞬フラッシュバックする。
喰われる!と思った瞬間、無意識に身体が震えた。それは恐怖か、それとも歓喜か。
「……っ」
混乱して、とりあえず身体を離そうと試みるが、アレルヤの次の動きにますます身が強張る。
「アレ、ルヤッ」
今起こっていることなんて、見なくてもわかる。アレルヤが自分の右腕を捕らえている手とは逆の手、つまりは彼の右腕が布越しにロックオンの足に触れてきていた。足の一番感じやすい――自分でそう認識して、ロックオンは顔を赤く染めた――太ももの付け根の内側である。手が、指先が、まるで意思を持ったかのように自在に動き、なめらかに円を描く。
「……ッは、」
もともと激しい動きのせいで息苦しかったというのに、アレルヤに左手で掴まれて人為的に狭くされた気管に無理やり空気を流し込む。右手は開放されていて、のど元を圧迫する彼の手に添えられている。下半身に与えられる快感に抵抗はできなかった。胸は上下し、同時にひゅっとのどが鳴る。
息苦しい。そのまま押し倒された衝撃と霞んだ視界の中で、同じく肩で息をしながら人影が小さく笑う。
「今日はッ…、僕の勝ちですね、ロックオン」
「卑、怯だ…ッ!」
苦しげに唸り出した言葉に、同じく息を乱したアレルヤはますます口の端をあげて嬉しげに言葉を紡ごうとしたとき。
「何やってるんですか、あなたたちは」
怒りを通り過ぎて呆れてしまった、とでも言いたげな声が響いた。
まさか他人が来るとは思ってもなかった――機体のシュミレーションならともかく、この部屋には人が滅多に入ってくることなどなかったのだ――二人は、もつれ合ったまま固まった。
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ティエリア介入。
一ヶ月前くらいに考えていたものに訂正をちょっと加えたものです。
やっぱり彼らもそれなりに訓練を受けてきたのかなぁと、期待しています。
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